南北コーラ こんな味のしない冷麺を食べたことがあっただろうか。 国の命運を左右する首脳会談を直前に控え、彼の箸を持つ手は震えていた。ここ数日眠れない夜が続いた。連夜催される美女軍団の宴も効果は無かった。床についても頭に浮かぶのは、西の大国のトップ。あの異様な髪型をした男の、勝ち誇った顔ばかりだった。 彼の国はかつてないほどに追い込まれていたのだ。「お薬を飲まれますか」 側近が耳元でささやく。彼は片手でそれを制した。「あれは冷えているか」「もちろんです…が、時間が」「いいから持ってきてくれ」 側近は踵をならして振り返ると、給仕の女に向けて三本の指を立てた。それを見た女は一礼すると部屋を出て行った。《核こそ抑止力成り》 震える手でスープまで飲み干...05May2018小説